自身で執筆した脚本や、好きな小説、歌、絵画などを元に、季節のうつろいや物語性を感じさせる写真を撮影している写真家・高埜志保さん(@Takano_Shiho)。思い入れのある太宰治の『女生徒』を題材にした作品を撮影していただきました。『女生徒』の世界観をお伝えするため、今回は小説を全文掲載いたします。写真作品と一緒に味わっていただければと思います。 ※小説は、青空文庫の内容を転載しております。 私と『女生徒』 太宰治の短編小説『女生徒』をはじめて読んだのは高校生のとき。 当時の私は、この小説をそこまで好きにはなれませんでした。それはきっと、世の中を厭い自分を卑下しつつも、「人を愛したい」「愛されたい」という相反する感情を持つ主人公そっくりな自分を、いやに意識してしまったからだと思います。 数年が経ち、比較的客観的な視点からこの本を読み返してみたとき、主人公の心の動きがスッと心に染み込んでいく