平和主義と正戦論 ―グローバル化と暴力の制御、あるいは「9・11」の衝撃― 別所良美 (名古屋市立大学 人文社会学部) はじめに 二〇〇一年九月一一日、乗っ取られた民間旅客機がニューヨークの世界貿易センタービルとワシントンDCのペンタゴンに激突するという悲惨な事件が起こった。巨大なツインタワーが倒壊し、何千人もの一般市民の犠牲者が出るというテロ事件は未曾有の出来事であった。その後、『九月一一日以降、世界は全く変わってしまった』とメディアは再三繰り返していた。しかし一体何が変わったのか。アメリカが定義する「正義」に従って、アフガニスタンへの軍事攻撃に始まる、「反テロ戦争」という名の軍事的暴力が世界に拡散することではないのか。 本稿は「9・11テロ」[1]の衝撃がもたらした変化を「平和主義」の危機と「正戦論」の復活という観点から考えてみたい。 1) 暴力のグローバリゼーション 九十年