ヨーロッパ精神史入門―カロリング・ルネサンスの残光 坂部 恵 岩波書店 1997-05-16 売り上げランキング : 362162 Amazonで詳しく見る by G-Tools 『ヨーロッパ精神史入門』は、読み進めるにつれて高まる興奮を抑えられないほどの含蓄にあふれた本だった。ただし裏返しに言えば、ここには含蓄しかないので(短い講義メモのようなものを25回分集めた本であり、詳細な文献改題や論証などはないので)、本書に何かを見いだした読者は、坂部恵が数行で書いていることの意味を自力で正確に理解し、その解釈や問題提起の妥当性と射程をたしかめるために、膨大な時間と知力を費やさなければならないorz。先が思いやられる……。 気を取り直して、いちばんのポイントだけ記すならば、近代の思潮における過度の唯名論的傾向に抗して、(スコラ的)実在論を復権させようということである。この縦糸を象徴する叙述として