救命救急センターには,不幸にも交通事故に遭ってしまった方も多く運ばれて来ますが,いまだに飲酒や酒気帯び運転が原因となっていることも少なくありません.飲酒検問のときには,アルコール検知器が使われますが,全くアルコールを飲んでいないのに呼気からアルコールが検出される病気があります. この疾患は,1972年に日本で発見されたと報告されていて,今は「自動醸造症候群(Auto-Brewery Syndrome)」と呼ばれています.極端な食事制限や抗菌薬の使用で腸内細菌のバランスがくずれることにより,腸管内に出芽酵母(イースト菌)が増加し,酵母が糖をアルコールに変換することが原因です.結果的に,食事をするだけで腸内でビールが醸造され酔っぱらってしまうのです1). アメリカのテキサス州に住む61歳の男性の例が報告されていて,彼はアルコールを飲んでいないのに,酩酊のような意識障害をきたして救急外来に運ばれ