式典と嫉妬 三十年以上前の話になる。記憶は曖昧だ。もう昨日のことも曖昧なおれの脳みそには断片しか残っていない。 学校の、式典のことだった。なんの式典だろう? おれは中高一貫校の出だ。中学校の卒業式かもしれない、高校の卒業式かもしれない。おれにはよくわからない。 よくわからないが、鮮明に覚えているシーンがある。おれとけっこう気の合った、仲のよかったやつが、証書の授与に行くところで、わざと転けたのだ。あからさまにわざと転けた。 それを理事長が「個性のある子もいました」というように褒めたのだ。おれはそれに嫉妬を覚えた。学校の理事長がわざと転けたふりをして、注目を浴びようとした生徒を褒めた。それだけのことなのに、なぜおれは嫉妬を覚えたのか。その理事長が、徳間康快という男だったからだ。 徳間康快という人間 おれがこのたび「徳間康快」という人間を思い出すきっかけになったのは、佐高信の『メディアの怪人徳
![封切り前のジブリ映画を生徒に観せた学園理事長の話。](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/e1bb435a2cc521f0de59124bd64ee5d125eb1855/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Ffanyv88.com%3A443%2Fhttps%2Fblog.tinect.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2024%2F11%2F3717326888_23955e888e_k.jpg)