北極海の「砂漠」で生物生産を支えるエネルギー供給源が明らかに ―窒素固定が北極海及び全海洋の窒素源として重要な可能性が― 1. 概要 国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)地球環境観測研究開発センターの塩崎拓平特任研究員らと国立大学法人東京大学大気海洋研究所の共同研究グループは、北極海(図1)の窒素固定の特異性と窒素循環における役割を明らかにしました。 北極海を含む海洋の生物生産において、窒素は基礎的な栄養源として非常に重要な役割を担っています。窒素固定とは、大気や海洋中に存在する窒素分子を生物が利用可能な栄養塩へと微生物が変換するプロセスです。窒素固定は、他の窒素栄養塩(硝酸塩やアンモニウム塩)を利用するプロセスに比べてエネルギーを大量に消費することから、他の窒素栄養塩が枯渇した「海の砂漠」と称されるような熱帯・亜熱帯貧栄養海域で主に行われて