久々の高校世界史深掘りシリーズ。近現代のイスラーム世界において,反欧米・反近代化へのイデオロギー,あるいはナショナリズムの柱としてイスラーム教が用いられることが多く,それらは「イスラーム主義」と総称される。しかし,その発露は「ムハンマドに立ち返れ」というスローガンを掲げてアラビア半島のアラブ人ナショナリズムと結びついたワッハーブ派から,アフガーニーのようにイスラーム教徒間の差異を乗り越えて団結を促したパン=イスラーム主義まで,イスラーム主義と言ってもその幅は広い。「ムハンマドに立ち返れ」というのも,精神だけの話なのか,本当にシャリーアを厳格に運用すべきという話なのかによって内実が違うし,達成手段が民衆の支持を広げる穏健的なものか,武装闘争によるものかでも違う。対英仏で反帝国主義闘争の色彩が強かった近代のイスラーム主義と,対米・対イスラエルの色彩が強い現代のイスラーム主義を分けずに継続して扱