日本の音楽漫画の金字塔ととも称される作品が、実は音楽に仮託される物語性をすべて否定していたとすれば、それなりに驚きではないでしょうか。 ふと上條淳士さん(ならびにYOKO=村瀬葉子さん)の最高傑作『To-y』を読み返していました。音楽漫画は『BECK』や『NANA』、その後も『けいおん!』から『ぼっち・ざ・ろっく!』、『ふつうの軽音部』など登場しており、時に『To-y』はそんな作品群の金字塔ともいわれていますね。 しかしその中で『To-y』はいまだに言葉にしにくい奇妙な手触りがありますね。それゆえに、連載から40年が経っても、今日までメディアミックスがOVAやイメージ・アルバムに限定されており、長編のTVアニメや実写映画化といった広がりをもたないのではないでしょうか。 今回読み直して思ったのは「音楽(ロック)からなんのイデオロギーもなくなった後」について描くことを徹底しているのが、なにより