アパレル業界に寄せられる品質面でのクレームの中で上位に入るのが、「ピリング」という問題だ。いわゆる「毛玉」である。生地の表面に生じた毛羽(けば)が絡まり合い、小さな粒になったものだ。小さな粒なので、英語では錠剤の「ピル」と同じ言葉で表現し、それが業界用語になっている。 ピリングは大なり小なりどんな生地にも発生するが、圧倒的に短繊維織物や編み地に多い。短繊維とは、綿やウールなど、比較的短い繊維である。それを撚り合わせて糸にする。短い繊維を撚り合わせているので、糸の中に繊維の端っこが多い。その端っこが摩擦で表面に引き出されると、互いに絡み合って粒状になり、ピリング発生ということになる。 一方、シルクなどは一般的にピリングが発生しにくい。蚕の口から吐き出された長い長い繊維(長繊維)を使って糸を作るからだ。糸の中の繊維に端っこがほとんどないようなものなので、毛羽も出にくい。 そして、ポリエステルも