2019年の『R-1グランプリ』の興奮もすっかり覚めやった中*1、敗者復活から勝ち上がった岡野陽一(元・巨匠)が披露した1本のコントが頭にこびりついて離れない。それは「鶏肉をもう一度大空に飛ばしてやりたいんだ」という奇天烈な内容で、当然のように客席からはこの日1番の悲鳴が上がった。『水曜日のダウンタウン』がかもめんたるや野生爆弾くっきーを擁して「悲鳴-1グランプリ」を開催し、お笑いコンテストにおける観客の悲鳴を揶揄してみせたのには思わず快哉の声を上げてしまったものだが、岡野のコントへの"悲鳴"という反応はどこか正しいようにも感じた。何故ならあのコントには、わたしたちが目を背けているうしろめたさや違和感のようなものがゴロリと横たわっているからだ。わたしたちが当たり前のように口にする鶏肉は、かつて空を飛ぶ鳥だったという事実*2。「このチキンソテーって殺される前は空を飛んでいたんだよな・・・」そ
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