以前も紹介したが、リリィさんという同僚がいる。昨日、午後6時をまわったくらいのことだ。普段あまり自分の席を離れない彼女が、ラップトップを小脇に挟み、すたすたぼくの席の前を歩いていった。 「えーリリィ今から顧客と会議!?」別の同僚が驚いて声をかけた。リリィさんみたいに企画担当の人が、ラップトップを持って席を離れる時は、会議室で顧客と電話会議と相場が決まっているのだ。リリィさんは足をとめ振り返り言った。「ちがうちがう。これからスタンフォードの公開授業を聞くの。ハワイ君と。」ハワイ君というのは、ハワイアン(ハワイ出身という意味だけでなく原住民の血が流れている)の男の子で、リリィさんの唯一の部下だ。 「へえスタンフォードの授業なんてすごーい」「すごくないわよ。公開授業だし、大学一年生が取るクラスよ。」「なんのクラス」「プログラミング入門のクラス。106Aっていうの。」「リリィ、プログラミングするの