7月31日、アイソトープ、酵素反応、蛍光などを標識した遺伝子プローブを用いて遺伝子発現を「見て」いたこれまでのin situ hybridization法を、バーコードでラベルしたプローブを用いて、発現遺伝子を「見る」代わりに、塩基配列を「読む」ことで検出するという、今年京都賞を受賞したDeisserothtたちが開発した画期的な論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/8740)。 同じように塩基配列をバーコードとして用いる方法は、抗体による組織染色にも用いることができることを示したのが今日紹介するスタンフォード大学からの論文で8月9日号のCellに掲載された。タイトルは「Deep Profiling of Mouse Splenic Architecture with CODEX Multiplexed Imaging (CODEX多重イメージングによるマウス脾
AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 7月31日:組織中で遺伝子配列を読んで、各細胞で発現しているRNAを正確に定量する(7月27日号Science掲載論文) この人の頭の中はどうなっているのかただただ驚く天才がどの分野にもいる。これらの人に共通するのは、明確な目的とゴールを定め、そのためにアッと言わせる技術的イノベーションを重ねていく点だ。私が読む論文の範囲でいうと、スタンフォード大学のKarl Deisserothはその一人だろう。光遺伝学を始め彼のグループから発表された新しい技術は、いつもアッといわせる、脳を見る、測るという一点に絞って、いつも新しい技術的可能性を開拓しているように思う。 毎回、こんな事までやっているのかと思わす彼のグループからScienceに発表された今日紹介する論文を読んで、「まさかこんなことまでチャレンジしているとは予想もつかない』と本当に驚
田矢祐規・山崎 聡 (東京大学医科学研究所 附属幹細胞治療研究センター幹細胞治療分野) email:田矢祐規,山崎 聡 DOI: 10.7875/first.author.2016.119 Depleting dietary valine permits nonmyeloablative mouse hematopoietic stem cell transplantation. Yuki Taya, Yasunori Ota, Adam C. Wilkinson, Ayano Kanazawa, Hiroshi Watarai, Masataka Kasai, Hiromitsu Nakauchi, Satoshi Yamazaki Science, 354, 1152-1155 (2016) 要 約 造血幹細胞は骨髄の微小環境において未分化性を維持している.筆者らは,骨髄におけるアミノ
CRISPR/Cas9は遺伝子編集と名付けられているが、編集というには、自由に中身を変更することが必要だ。ところが、今の所この技術を使って中身を変化させる、すなわち特定の場所に他の遺伝子配列を導入することは簡単ではなかった。 今年の5月、この技術を用いて遺伝子ノックインが難しい原因を、Cas9が相同組み換え中にもう一度遺伝子を切断するからではないかと考え、用いるオリゴヌクレオチドを工夫して正確な遺伝子置換ができることを報告したロックフェラー大学からの論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/5208)。ただ正確とはいえ、遺伝子置換の効率から見ると低く、この技術を活かしたとは言い難い結果だった。 この研究からわかるのは、ほとんどの人がノックインには相同組み換えが必要だと考えてしまうことだ。これに対し、今日紹介するソーク研究所からの論文は、ノックインには相同組み換えを
Dogs are the most popular pet in the U.S.: 65.1 million households have one, according to the American Pet Products Association. But while cats are not far off, with 46.5…
森崎達也・Timothy J. Stasevich (米国Colorado州立大学Department of Biochemistry and Molecular Biology) email:森崎達也 DOI: 10.7875/first.author.2016.049 Real-time quantification of single RNA translation dynamics in living cells. Tatsuya Morisaki, Kenneth Lyon, Keith F. DeLuca, Jennifer G. DeLuca, Brian P. English, Zhengjian Zhang, Luke D. Lavis, Jonathan B. Grimm, Sarada Viswanathan, Loren L. Looger, Timothee Li
21世紀に入って、自由に動く動物の脳活動を記録し、また活動を人為的に調節したいという神経科学の目標は急速に実現しつつある。特に、特定の神経集団を好きな時に興奮させて行動変化を調べるために開発された光遺伝学や化学遺伝学の発展は目をみはる。光遺伝学は光に反応するイオンチャンネルを脳細胞に発現するよう遺伝子改変を行い、光を照射した時だけその神経が興奮するようにする技術で、このため光遺伝学と呼ばれている。ただ、光を脳内に照射して神経を興奮させるこの手法は、光照射装置を脳に装着する必要があり、遺伝子改変した動物を完全に自由に行動させることは難しい。これを補うため、化学遺伝学が開発され、特定の化学物質を投与した時、目的の脳細胞が興奮する動物を使うことで、照射装置の装着が必要なくなった。ただ、物理的刺激ではないので、on/offを繰り返すといった実験には向かない。 今日紹介するバージニア大学からの論文は
植物の葉や根、茎、花などを丸ごと透明化し、解剖することなく内部を細胞レベルで観察できる新技術を開発したと、名古屋大学が10月28日に発表した。植物の3次元構造を維持したまま観察できるなどメリットは大きく、「世界中で植物科学研究が加速していくことが期待される」としている。 理化学研究所が開発した透明化解析技術「CUBIC」で用いた方法を植物に応用。植物を蛍光たんぱく質を使った観察の際に邪魔になるクロロフィル(葉緑素)を除去する最適な化合物の組み合わせを探し、植物を透明化する試薬「ClearSee」の開発に成功した。 生体組織の内部構造を観察するためには「2光子励起顕微鏡」という高価な顕微鏡を使う必要があったが、蛍光たんぱく質で標識した組織を透明化した場合、一般的に普及している「共焦点顕微鏡」でも観察できるという。透明化した組織の細胞壁と細胞核を後から蛍光色素で染色することもでき、蛍光たんぱく
ScaleS: an optical clearing palette for biological imaging Hiroshi Hama, Hiroyuki Hioki, Kana Namiki, Tetsushi Hoshida, Hiroshi Kurokawa, Fumiyoshi Ishidate, Takeshi Kaneko, Takumi Akagi, Takashi Saito, Takaomi Saido & Atsushi Miyawaki Nature Neuroscience (2015) AOP, doi:10.1038/nn.4107 水溶性試薬による脳透明化の火付け役、濱先生&宮脇先生 et al., からNature Neuroscience新作。ソルビトールと尿素によって脳が透け~る、その名もScaleS。論文内容の解説は理研のプレスリリースが相変わ
最近は、昔ながらの制限酵素を用いたベクター構築ではなく、制限酵素部位に依存しない様々なクローニング法を活用できます。ここで紹介するSLiCE (Seamless Ligation Cloning Extract)法は、E. coli lysateの持つ内在性homologous recombination活性をin vitroで用いて、制限酵素部位に依存せずPCR断片をベクターへクローニングする方法です(いわゆるseamless cloning)。このseamless cloningに関連する試薬は、Gibson assembly kitやIn-Fusion kitなどの名称で様々なメーカーから商品化されていますが、その多くが高価で、資金の乏しい研究室では購入を躊躇しているかもしれません。そのような方に、ぜひ試していただきたいのがこのSLiCE法です。 1. SLiCE from Esch
木村 航・Hesham A. Sadek (米国Texas大学Southwestern Medical Center,Department of Internal Medicine) email:木村 航 DOI: 10.7875/first.author.2015.087 Hypoxia fate mapping identifies cycling cardiomyocytes in the adult heart. Wataru Kimura, Feng Xiao, Diana C. Canseco, Shalini Muralidhar, SuWannee Thet, Helen M. Zhang, Yezan Abdulrahman, Rui Chen, Joseph A. Garcia, John M. Shelton, James A. Richardson, Abdelra
要旨 理化学研究所(理研)生命システム研究センター先端バイオイメージング研究チームの市村垂生研究員、渡邉朋信チームリーダー、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの藤田英明准教授らの共同研究チーム※は、ラマン散乱光[1]の分光スペクトル[2]を用いて、細胞の分化状態を非染色かつ非侵襲で識別し、細胞分化の途中過程における細胞状態の変遷を可視化することに成功しました。 正常細胞とがん細胞との識別や良質な人工多能性幹細胞(iPS細胞)[3]の仕分けなど、細胞の種類や分化状態を判断するために、近年では遺伝子やタンパク質発現・相互作用などの情報が主に使われてきました。しかし、これらの情報を得るためには、細胞を破砕するか、蛍光抗体[4]で染色する必要があります。このような従来の方法では細胞に損傷を与えてしまうため、細胞を損傷なく識別する方法の開発が待たれていました。 ラマン散乱は、物質に光を照射した際
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