江戸時代、好古家(こうこか)と呼ばれる「古い物好き」たちがいた。彼らの熱心な営みに多角的に迫る企画展「いにしえが、好きっ! 近世好古図録の文化誌」が国立歴史民俗博物館(歴博、千葉県佐倉市)で開かれている。近代的な博物館の誕生以前、過去への好奇心はどんな形で発揮されたか。 歴博の所蔵品に「聆涛閣集古帖(れいとうかくしゅうこちょう)」という江戸時代の好古図録がある。全46帖(縦33・5センチ×横25・8センチ)。各地の宝物、美術工芸品、出土した考古資料、文書・典籍など約2400件を写した図版を収める。現国宝・重要文化財も多い。集古帖は、現在で言う文化財の図録に当たる。 制作者は、今の神戸・灘で酒造や回船業を営んでいた豪商の吉田家。18世紀後半から19世紀後半の約100年、3代の当主が自身や他の好古家の収集品、公家や寺社に伝わる古器物の精巧な模写や拓本を作り、名称や所蔵者、由来など簡略な注を付け