【ロンドン=木村正人】日本で裁判員制度が始まるのを前に、陪審制の起源とされる英国の刑事陪審を傍聴した。陪審員には「生涯、評議内容を口外してはならぬ」という重い責務が課されている。裁判の公正を期すため、陪審員に予断を与える事件・裁判報道は法律で禁じられており、報道各社の自主規制に委ねられている日本とは異なる。 4月下旬、ロンドンの刑事法院で傷害事件の公判が開かれていた。陪審員は選挙登録名簿からコンピューターで無作為に選ばれる。公判の当日、裁判所の待合室で15人の名が呼ばれ、入廷後、最終的に12人が選ばれた。陪審員は1人ずつ聖書に手を載せ「証拠に基づき偽りなき評決を下す」と宣誓。裁判官は「いったん法廷を出たら家族や友人にも事件のことは話してはならない」とクギを刺した。 3日間にわたる証拠調べの後、4日目に陪審員12人が別室で評議し、全員一致で無罪の評決を伝えた。評決の理由は示されなかった。誤判