クマが夜の森の地面に伏せている。右手の指を大きく広げて押さえつけているのは、息絶えたニホンジカだ。 「尻の方からシカを食べているところなんですよ」 長野県駒ケ根市、中央アルプスの麓の木立に包まれた仕事場で、動物写真家の宮崎学さんが説明してくれた。 ■ 一瞬、わが目と耳を疑った。本州にいるツキノワグマは、草木の根や新芽、果実といった植物食が中心で、他にはアリやハチ、カニなどだけを食べているのではなかったか。それが、何と大型獣を食べている。にわかには信じられない光景だ。 「では」。宮崎さんがパソコンで次々、画像を見せてくれる。シカの内臓が写っている。それをクマがむさぼっている。 「自然界の報道写真家」を自任する宮崎さんが、森にセットした無人ロボットカメラで撮影した記録作品だ。 「クマは森の掃除係。アフリカのハイエナと同じです。だから何でも食べます。それを現