米アマゾン・ドット・コムの台頭が世界の小売りを脅かしている。セブン&アイ・ホールディングスも例外ではない。中核であるコンビニエンスストアの育ての親、鈴木敏文前会長が経営から退いて2年半。井阪隆一社長は自前主義を捨て、異業種と組む「開かれた経営」に活路を見いだす。6月14日、東京都港区のグランドプリンスホテル新高輪で、セブンイレブンが国内2万店を超えた記念式典があった。そこへ鈴木氏が登壇し、会場
こんにちは、富永です。 先日、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が退任を表明されました。一連の報道ではその政治的な側面ばかりがフィーチャーされていますが、鈴木氏は日本の流通の発展をけん引してこられた功労者であり、希代の経営者であると私は思います。 そこで今回は鈴木氏のどこがすごいのか、その功績から検証してみたいと思います。 「コンビニを根付かせた」ことの本当の意味とは? 鈴木氏は日本初のコンビニエンスストア(以下、コンビニ)としてセブン―イレブン事業を開始し、現在約2万店のチェーンにまで成長させるとともに、それを通じて日本のコンビニ業界全体をけん引してきました。最も大きな功績はこの点だと思います。「コンビニを根付かせた」というとひと言ですが、これがどのくらい偉大なことか、少し考えてみましょう。 まず、セブン―イレブン、ローソン、ファミリーマートなどのコンビニの店内から、それぞれの
普段、何気なく使っているコンビニエンスストア。そこで入ってくる様々な情報に目を凝らし、タテに深くヨコに広く分析することで、社会環境の変化とそこから生まれる新しいビジネスをイメージすることができるようになります。 「セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者が退任」。4月初旬、テレビや新聞で大きく報道された記事です。このニュースが大きく報道されたのは鈴木氏の功績の大きさを物語っていますが、それと併せて、コンビニエンスストア(以下:コンビニ)の影響力の大きさにも気づかされた記事でした。 振り返ってみると、コンビニは、時代ごとに新しいサービスを提供してきました。24時間営業を始め、宅配便の取り扱い、光熱費などの振り込み、キャッシュコーナーの設置、電子マネーの利用など、新しい技術・サービスを取り込みどんどん便利になっていきました。また、商品についても、おにぎりやお弁当から始まり、
井阪隆一(いさか・りゅういち) 1957年10月生まれ。80年セブン―イレブン・ジャパン入社。商品畑を歩み2002年同社取締役、2006年同社取締役常務、2009年同社代表取締役社長兼セブン&アイ・ホールディングス取締役、2016年5月セブン&アイ・ホールディングス社長就任予定(写真:的野弘路、以下同) 鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者、83歳)の突然の退任表明によって大混乱に陥っていた、セブン&アイ・ホールディングスのトップ人事が4月19日、ようやく決着した。セブン&アイの次期社長には、子会社セブン-イレブン・ジャパンの現社長でセブン&アイ取締役の井阪隆一氏(58歳)が昇格。セブン&アイの副社長には後藤克弘取締役(62歳)、セブンイレブンの社長には同社の古屋一樹副社長(66歳)が就く。鈴木会長と村田紀敏・セブン&アイ社長兼COO(最高執行責任者)は退任する。 一連の騒動は、鈴木会長が
4月7日、セブン&アイ・ホールディングスの2016年2月期決算を説明する記者会見の会場は、異様な雰囲気に包まれていた。 かねて、同社の鈴木敏文会長兼CEO(最高経営責任者、83歳)は、傘下でコンビニエンスストア事業を手掛けるセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼COO(最高執行責任者、58歳)に対し、退任を求めてきた。4月5日に開かれた指名・報酬委員会では、井阪社長の退任と新たな人事案について、鈴木会長とセブン&アイの村田紀敏社長兼COO(最高執行責任者、72歳)、社外取締役2人の計4人が、5時間に渡る議論を重ねた。それでも結論は出ず、7日の取締役会で、井阪社長の退任を含めた人事案が諮られることになった。 結果は、賛成7票、反対6票、白票が2。取締役15人の過半の賛成を得ることができず、鈴木会長の提案した人事案は否決された。これを受けて、鈴木会長は退任を決意したという。午後4時半から開
セブン-イレブン・ジャパンが、これまでPB(プライベートブランド)や特定小売り向け専用商品の開発から一線を画してきたトップメーカーを揺さぶっている。日本コカ・コーラが同社の看板缶コーヒーブランド「ジョージア」で、セブンのPB「セブンプレミアム」のロゴを付けた商品を発売するほか、花王や資生堂もセブン向けに専用商品を提供する。 日経ビジネス本誌は2014年6月16日号で「セブン 鉄の支配力~ヒットを作る勝者の流儀」という特集を組んだが、ここに来てメーカーに対する“支配力”が一層高まっている。背景にあるのは、セブンプレミアムの売り上げが拡大しており、セブンイレブンの棚からNB(ナショナルブランド)の商品が排除される可能性が一段と高まっているからだ。
2014年3~11月期の連結決算発表を受けて、2大流通企業であるイオンとセブン&アイ・ホールディングス(HD)がそろって株価を下げた。両社とも1月9日に発表を行ったが、翌営業日13日の株価はイオンが6%安、セブン&アイHDが3%安となった。3~11月期9カ月間のセブン&アイHD決算は、営業収益が4兆5017億5100万円と対前年同期7.5%の増収、営業利益は2494億5500万円で同0.1%増だった。増加分はわずかとはいえ、同時期の営業利益としては過去最高となった。 にもかかわらず株価が下がったのはなぜか。業績が芳しくなかったイオンの株安に連られての「連れ安」の要素もあるだろうが、市場がセブン&アイHDの「企業組み合わせ」、つまり事業ポートフォリオに対して低評価を下した、もしくは疑問を感じ始めたと受け取るべきであろう。具体的には、同グループの中に総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂を抱え
セブン&アイホールディングスのオムニチャネル戦略が動き出した。セブン-イレブン、イトーヨーカ堂、デニーズから、そごう・西武、フランフラン(バルス)、赤ちゃん本舗、ニッセンまで、全国に約1万8000店舗を擁するセブン&アイグループにとっては「宿命」のオムニ戦略だ。 4月24日、オラクルが東京・大手町のパレスホテルで開催した「オラクル・インダストリー・リーダーシップ・サミット2014」。このイベントはIT大手のオラクルが主催する業界ごとに、ITの活用事例を紹介するもので、昨年に続き2回目となる。3月に米ボストンで開催されたイベントの日本版でもある。パナソニックやキヤノン、NTTドコモ、マツダ、アサヒグループHD、リクルートなど注目企業の講演も数多く用意されたが、その基調講演に登壇したのが、セブン&アイHDの村田紀敏社長。その経営戦略について1時間にわたって熱く語った。 ネットとリアルの融合こそ
大手スーパーのイトーヨーカドーが、今月から店内に上の写真にあるような掲示を始めたことはご存じだろうか。 特売は商品ごとに実施へ 同社はこれまで、原則として毎週水曜日に冷凍食品の「半額セール」をしてきた。だが11月26日を最後に、同社はこうした販促をやめるという。12月以降も特売自体をなくすわけではないが、個別の商品ごと、日付ごとに割引額を設定する手法に切り替えるようだ。 「定例の大幅値引き」は、ヨーカドーに限らず多くのスーパーが採用してきた。ある程度の保存が利き、簡単な加熱などで食べられる冷凍食品は、もはや多くの家庭にとってなくてはならない存在になっている。そうした冷凍食品の大幅値引きは、集客面で絶大な効果を発揮してきた。なぜそれを、ヨーカドーはやめるのか。 同社広報担当によると「割引対象外の商品が増えてきたため」という。 PB(プライベートブランド)である「セブンプレミアム」などの独自商
何の変哲もないメガネ屋だと、多くの人は思うだろう。 安価を売りにしたチェーン店と比べれば、いくらかしゃれた店舗デザインではある。陳列棚にタブレットが据え付けられているのも、なんだか今風だ。 だが、わずか41平方メートルの店内は決して広くない。その店内に、幾分ゆったりと並べられた商品の数も約300品目と、どちらかと言えば少なめだ。このこぢんまりとした店舗に、これまでの小売業の常識を覆す様々な挑戦的な取り組みが盛り込まれている。そう気付く人はほぼいないだろう。 ここは雑貨専門店ロフトの旗艦店、「渋谷ロフト」の1階。エスカレーターすぐの、店内でも人通りが多いエリアだ。11月5日に開業したばかりの「Oh My Glasses」は、日本最大級の眼鏡専門EC(電子商取引)のオーマイグラス(東京都品川区)が初めて設けたリアル店舗になる。 1階に入った眼鏡屋 「商業施設に入っている眼鏡屋は、ほとんど上層階
鈴木会長がリアルとインターネットを含めた様々な販路を連携させるオムニチャネル戦略というキーワードに注目したのはなぜですか。 鈴木:私は、10年以上前から、ネットとリアルの融合ということを、社内で言い続けてきました。まだ、どこでもそんなことが言われてなかった時から、必ず、そういう時代が来ると、感じていたからです。セブン&アイは、コンビニから百貨店まで、様々な業態を持っており、シナジー効果を出すということを考えていかなければならないと思っていた。そごう・西武と統合した時も、マスコミのみなさんから、スーパーと百貨店とコンビニがくっついても、どうにもならないんじゃないか、シナジー効果なんて出せないんじゃないかということを、相当言われました。その当時から、私は、従来の百貨店のあり方、スーパーのあり方など、従来の業態のあり方がなくなるのではないかということをひしひしと感じていました。 その中で、私が具
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