ブラジルは2006年にISDB-T(”日本方式”の地上デジタル放送方式)採用を発表した。決定にあたり鍵となったのは、”日本方式”からの変更を日本が認めたことだ。日本は特許料の一部免除にも同意した。ブラジル版(ISDB-Tb)はMPEG2の代わりにMPEG4を用い、ミドルウェアは欧州連合の協力でブラジルの大学が開発したものに置き換えられた。日本製のテレビはそのままでは販売できないようになり、一方で、ブラジルは国内生産を促した。ブラジルはISDB-Tbのラテンアメリカ域内への普及に力を注ぎ、アルゼンチン、コスタリカ、チリ、パラグアイ、ペルー、ベネズエラなどが次々に採用を決めた。ブラジルは、デジタルテレビ技術に関する知識をいち早く吸収することで国内産業を育成し、隣国に影響力を行使して輸出利益を得るという政策を取ったのである。 学会誌Telecommunications Policyの第35巻(2