スリランカでは2024年9月21日に大統領選挙が行われ、人民の力(NPP)代表のアヌラ・クマーラ・ディサナヤケ(通称AKD)が当選した。NPPは、大統領選挙の時点で国会にわずか3議席しかもたない小政党だった。ところが11月14日の国会議員選挙でもNPPは躍進し、過半数議席を獲得した。 1978年に大統領制が導入されて以来、基本的にスリランカの大統領は伝統的な二大政党である統一国民党(UNP)とスリランカ自由党(SLFP)のどちらかから選ばれてきた。また国会選挙においては、単一の政党が過半数議席を得ることはなかった。今回、第三勢力だったNPPから大統領が選出され、同党が単独で議会の過半数を制したことは、スリランカ政治史の転換点として記憶されるであろう。本稿では、この転換点に至るまでの経緯をみるとともに、NPPとその指導者AKDの出自と台頭の背景を考察する。 スリランカ政治に変革をもたらす原動