先週、外務省の依頼で中国に講演にいった。毎度のこととはいえ、聴衆から質問が絶えない。「どうして田母神さん(前空幕長)のような認識の人が軍の最高位につけるのですか」。答えにくい。実を言うと僕も田母神氏に賛成できないからだ。 「中国に駐留していた日本軍は、安保条約の下で日本にいる米軍と同じ」、「太平洋戦争はルーズベルトの仕掛けた罠(わな)、戦わなければいまごろ日本は白人国家の植民地」といった主張が、検証に耐えられない論拠で綴(つづ)られた「論文」が、審査の結果、最優秀(賞金300万円!)だったという。 日中関係について、聴衆に問いかけた。「日本にとっても中国にとっても、最重要国はアメリカです」。聴衆はうなずく。「さて、2番目に大事な国は?」。聴衆は答えない。で、自分で言う。 「皆さんは『欧州』とか『アジア全体』とか答えますが、2番目に大事な国は日本にとっては中国、中国にとっては日本だと思います