◇偏見や情報不足、早期受診の壁に 新婚当初から2人は、ある話題になるといつも険悪なムードになった。「第三者から精子をもらう方法もあるそうよ」「なぜそこまでして子どもが欲しいんだ」。東北地方の会社員の夫(36)は第2次性徴が起こる年ごろの変化が少なく、大人になっても射精したことがなかった。「子どもは無理」という告白を受け入れて結婚した妻(38)だが、「女として生まれたからには一度は子どもを産みたい」との思いは断ち切れなかった。 結婚から2年半が過ぎた08年の夏、夫が折れて非配偶者間人工授精(AID)の治療を受けることにした。治療に必要な「無精子症」の証明書を出してもらうため、国際医療福祉大病院(栃木県那須塩原市)を受診すると、男性不妊が専門の岩本晃明教授(泌尿器科)から意外な言葉をかけられた。「薬で治る可能性があります」 夫は、精子を作るために必要なホルモンの分泌に異常がある「低ゴナドトロピ