フリーのエンジニアX氏の主張通りだとすれば,富士通は外注企業の管理やユーザーの機密保持について,極めてずさんだったと言わざるを得ない。富士通は,「捜査が進行している段階なので,システム開発の状況も含めて,現段階では具体的なことは公表しない」としている。 X氏の言葉がすべて事実かどうかは不明だ。しかし,同氏が語ったデータ流出の経緯がデタラメとは言い難い。現実に日本のIT業界では,多段階の下請けによるシステム開発が,機密保持契約なしで進むことが常態化している,といっておかしくない状況にあるからだ。4~5次以降の下請けとなるフリーのエンジニアや,中間マージンだけを取る“口入れ屋(奉公人の斡旋をする人)”の存在は以前から周知の事実といえる。X氏の話は,“ありがちなこと”と言える。 国内大手ベンダーは各社ともこのような状況を知っている。さらに多段階下請け構造では,契約や機密保持についての姿勢は不十分