(この話に登場する人物にモデルはいますが、仮名を使う などご本人とわからないように詳細は変えて書いています) 自分はまだ大丈夫、今日と同じ明日が来る、と信じる病人の気持ち一瞬視界が真っ白になりました。「ひどく煙った部屋だな」私がロクロウさんの部屋のドアを開け、中を見渡すと、6畳程度の部屋にある使い古したベッドには、痩せた男性がテレビを観ながら、静かに横になっていました。 脇にはたばこの吸い殻が大量に並ぶ、灰皿がありました。ロクロウさんは、私と目が合うと、その躯体とはおおよそ似つかわしくない、鋭い目つきで私を見つめました。 とある病院から、肺がんのロクロウさんのことを初めて紹介されたのは、1週間前のことでした。病院からは、「外来の受診も、入院も、本人を説得しても、全く応じない。家族も困っている。病院としては、何も手助けができない」ととても困っていることがよく分かりました。 私は、緩和ケアを長