東日本大震災が発生した3月11日午後。ちょうどプロ野球・横浜―ヤクルトのオープン戦が行われていた横浜スタジアム(横浜市中区)で、冷静なアナウンスがパニックになりそうな観客たちを静めた。声の主は、スタジアムDJ栗原治久さん(43)。まだ強い余震が続く中で開幕したプロ野球。13日が同スタジアムでの今季初仕事となった栗原さんは、気を引き締めながら再びマイクを握った。 体験したことのない大地震が、同スタジアムの象徴ともいえる逆三角形の照明灯をぐらぐらと揺らした。観客が悲鳴を上げ、一部は立ち上がって出口に向かった。その騒然とした雰囲気を静めたのが、栗原さんの冷静なアナウンスだった。 「座ってお待ちください」「この球場は広域避難所です」。同スタジアムによく通る声が響くと、観客は次第に落ち着きを取り戻し、自席に戻った。内野席にいた女性(30)は「自宅は歩いて帰れる距離だが、アナウンスで広域避難場所だ