象狩り、不正資金疑惑、女性問題──スペインのフアン・カルロス前国王は在位中も退位してからもゴシップには事欠かない。やっとすべてが落ち着いたかと思いきや、まだ問題は残っていた。以前から「自分は国王の息子だ」と主張する田舎のパブで働く男性が、ほかの店へ転職したのがきっかけとなり、地元で注目を集めているのだ。 パブのウェイター、アルベルト・ソラ・ヒメネスには隠されたすごい話がある。 それは、孤児だった幼少期にはじまる。地中海の島の農家で育てられた彼は、ある日突然、バルセロナの屋敷に連れていかれた。軍人や外交官たちが彼の「高貴な血筋」に関する噂を囁くなか、スペインのある諜報部員が彼の出生の謎にまつわるヒントの点と点を結んだ──。 こうして導き出された結論は、まさにおとぎ話の大団円のようだった。 「とてもシンプルなことです。私は国王の息子なんです」 ソラは、客に2杯のワインを運びながらそう言った。こ