会員登録(無料)していただくと、記事から任意の箇所を抜粋したり、メモをつけて保存できるようになります。 ケルト十字架 アイルランド ©Tsuruoka Mayumi 日本列島人はAかBかという二項対立的な思考ではなく、AとBの中間性を大切にしてきました。天秤を思い浮かべていただくと、お皿の部分ではなく、幹の部分。体幹のバランスに重きを置いてきたのです。感覚的で微妙なものに価値を見出してきたことは、たとえば次の和歌にも表れています。 秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる これは『古今和歌集』に収められた藤原敏行の名歌です。秋の訪れが紅葉の色づきのように目に見える形では分からないけれど、風の音で感じられる。敏行はまさに<非在の在>を実感しています。 こうした感性にも通じる日本人の特質を、心理学者の河合隼雄先生は<中空構造>と呼びました。そしてそれは、欧米式の強制力には拠らな