大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第28回「佐野世直大明神」では、中盤の大きなクライマックスとなる田沼意知おきとも(宮沢氷魚さん)の江戸城中刺殺事件が重層的に描かれました。当事者の田沼家、佐野家はもちろんのこと、将軍家治、陰謀の主役の一橋治済ら体制側、意知に極秘裡に身請けされていた誰袖、蔦屋重三郎たちメディア側、そして民衆と、各層に強烈なインパクトを与えた大事件でした。(ドラマの場面写真はNHK提供) 「覚えがあろう」と政言、骨にまで達した刀傷 時は天明4年(1784)3月24日。ドラマでは佐野政言(矢本悠馬さん)が鬼気迫る表情で「覚えがあろう」と斬りつけ、必死に刀を避けようとする意知に何度も刀を振るいました。絶対に意知の命を奪う、という決死の覚悟を感じさせる矢本さんの渾身の演技でした。 当時の記録でも政言の攻撃は執拗なものでした。この日の役目を終えた意知は、同僚の若年寄らと江戸城
