大塚英志は『ワイルド・バンチ』の出演俳優であるアーネスト・ボーグナインの「いいですか、人が撃たれたら血は流れるものなんです」という発言に強い共感を示している。この発言は現実の条件を示しているが、フィクションにおいては自明でないからだ。自明でないものを主張するとき、そこには倫理観が表出される。大塚の倫理観は、いかにして現実へのコミットメントを回復するか、という方向に向けられている。従って、彼においては、虚構の写生を目的とする「ゲームのような小説」などは、現実への「責任」感に乏しい怠惰なものとして扱われる。この発想が「まんが・アニメ的リアリズム」、すなわち記号的な生の中で傷つく身体や死を描くかという問題へと繋がっていく。 しかしこの問題の立て方は果たして正しいのだろうか。なるほど、戦争翼賛まんがと手塚治虫の関係に注目し、傷つかない身体性=記号性が現実における侵略行為の隠蔽装置として機能していた