記事:晶文社 「人はだれでもデザイナーである。アップルパイを焼くことも、田舎野球の組み合わせを決めることも、子供を教育することも、すべてデザインである。デザインとは、意味ある秩序状態をつくり出すために意識的に努力することである」との強烈な一節から始まる『生きのびるためのデザイン』。 書籍情報はこちら 本書との出合い 私が大学でランドスケープデザインを学んでいた頃の恩師は、とても厳しい人だった¹⁾。デザイン指導の時間になると、教授室に置かれた大きなテーブルにすべての資料を並べ、対面に座る先生に向かって緊張しながら説明する。先生の背後には壁一面の本棚があって、膨大な蔵書がその知識量を象徴するような威圧感を生み出していた。 ある日、準備不足にもかかわらず先生の指導を受ける時刻になってしまった。必死で自分のデザインを説明するが、あらゆる角度から厳しい指摘が続き、どう返答しても「火に油を注ぐ」ばかり