3月11日の大震災から2ヶ月が過ぎた。神奈川に住んでいる私だが、実はこの時の揺れを体験していない。ちょうど九州は福岡の実家に帰省していた。九州の各地では、明日に開業を控えた九州新幹線の話題で沸き立っていた。 この未曾有の大災害を、それが発生した時点からずっとテレビで視ていた。ただただ視ていた。画面の向こうにリアルタイムで流れる光景は、この世のものとは思われなかった。のちに友人は、あの揺れを体験しなかったのは、同時代の人間として残念だといわれたが、そうなのかも知れない。 私自身、研究者として自然災害には人一倍思い入れがあったつもりである。それは農家の出身ということもきっと関係しているのであろう。私の専門とする江戸時代では、それこそこうした災害の史料には事欠かない。折りにつけそうした史料をみてきてはいたが、主には洪水に対する治水事業だったり、これから述べる小田原藩の災害復興過程の問題だったりし