要旨: 妊娠飲酒は胎児に様々な危険を与える可能性がある。なぜならば、妊婦は非妊娠時よりアルコールの代謝のレベルがダウンしており、アルコールを代謝する能力をほとんど持たない胎児にとっては、母から無理やり飲酒を強制されている状況になる。特に妊娠初期の胎児における影響が極めて大きい。このようなアルコールに被曝した胎児への胎内治療は進歩しているものの実現には至らず、出生後は先天異常児の適切な保育が行なわれるにとどまる。 Ⅰ 母体と胎児のアルコール代謝 総ての妊婦飲酒に於いて、それが胎児にとって安全ということはあり得ない。其の飲酒の量・期間・妊娠時期について胎児毒性との間の相互の因果関係は不明である。妊婦には適正飲酒概念(low risk and responsible drinking)は当て嵌まらない。胎児にとって最も安全なことは妊婦は飲酒せぬことであるが、今日、妊婦の飲酒者は10%を超えている