絞首刑は苦痛が少ないとする意見を多数見かけた*1。 彼ら(の多く)によれば、絞首刑は「一瞬」で意識を失う「最も苦痛の少ない」死刑の執行方法だというのだが、本当だろうか。判断の一助として、絞首刑の残虐性について判示した大阪地方裁判所平成23年10月31日判決*2を紹介する。 [筆者注:法医学者である証人によれば、絞首刑において]最も多く,典型的な経過は,①頸動静脈の圧迫により脳への血流が遮断されて酸欠状態となり,脳細胞が死滅して心臓停止により死亡する,あるいは,②咽頭が圧迫されて気道閉塞のため酸欠状態に陥り,同様の経過で死亡する,という2つのパターンである。これらは競合することも考えられる。前者(①)の場合には,脳に酸素が残る5ないし8秒間は意識があり,後者(②)の場合は,体に酸素が残る一,二分間は意識がある。そして,この間,頸部圧迫による苦しみや,縄によって生じる頸部の傷に伴う痛みを感じる