三ギニー (平凡社ライブラリー) 作者:ウルフ,ヴァージニア 平凡社 Amazon ヴァージニア・ウルフの『三ギニー』は、第二次大戦前夜である1938年の状況下に、反戦をテーマとしてフェミニズム的な立場で書かれた傑作だ。これを評論と呼ぶべきか、フィクションと呼ぶべきかは分からないが。 ウルフは、この10年前に、やはりフェミニズムの先駆的な作品として名高い『自分ひとりの部屋』を書いているが、それと比較すると、個人主義的・資本主義内部的な解の提示から、社会変革的・反資本主義的といってよい視点への移行、いや深化がうかがえると言ってよいであろう。この変化は、たとえば次の一節によくうかがえる。 『もしも国家があなたがたの妻に対し、その労働に見合った生活費を支給するなら(中略)、もしも彼女の自由にもましてあなたがたの自由に欠かせないこの手段が講じられたなら、職業男性が現在しばしば飽き飽きしながら、自分
