文=アルマ・ギレルモプリエト 写真=ショール・シュウォーツ 死を支配するという死神を崇める人々が、メキシコで増えている。その背景には、殺人が頻発する社会で救いを求める人の姿があった。 メキシコ北部にある刑務所「刑罰執行センター」に収監されていたその男のあだ名はスペイン語で「小さな男の子」を意味するエル・ニーニョだった。入所したのは今から9年半前。ほっそりとした体格で、顔には無邪気そうな間の抜けた笑いを浮かべている。会った時にはまだ大人になり切れていないような印象を受けたが、彼がこれまでにやってきたことを聞けば誰もがぞっとするに違いない。7歳の時に父親に捨てられたエル・ニーニョは、母方の祖父母に育てられたが、20歳の時に殺人を犯して捕まり、この刑務所に送られてきたのだ。 同じ監房に収監されているアントニオはこぎれいな身なりをした抜け目なさそうな男で、身のこなしが素早くつぶらな瞳の持ち主だが、