串山一郎さんは、国立病院機構が運営する広島県の精神科病院で、4ヵ月半にわたって隔離と多剤大量投薬を受け、38歳で亡くなった。なぜ一郎さんは、命を落とさなければならなかったのか? 遺族や関係者への取材を続ける、元読売新聞医療部記者・佐藤光展氏が、新著『なぜ、日本の精神医療は暴走するのか』で報じた内容の一部を特別公開する。 大切な「リュック」を取り上げた 一郎さんの主訴は「不眠、興奮、多弁」とカルテに記されている。自傷や他害の恐れはなかった。入院初日はどのような状態だったのか。看護記録から関係する部分を抜き出してみよう。 13時30分 入院 独歩にて入院。大きな声を出し、歩きまわる。入室しようとせず。スタッフ付き添い様子観察する。 14時45分 個室施錠開始 再三の促し、介助にて入室。興奮強い。 15時30分 放便、弄便あり。開けてほしいとドア叩き訴えている。上半身裸になっている。 22時00
