昭和を代表する映画監督・市川崑氏が、映画『炎上』を発表したのは1958年のこと。原作は三島由紀夫氏の傑作小説『金閣寺』だ。クライマックスでは究極の美に取り憑かれた主人公が寺に火を放ち、美しく聳え立つ建物が夜空を焦がして炎上する――。それから数十年、「炎上」という言葉は、火が燃え広がるという本来の意味だけではなく、「インターネット上のブログやSNSで、批判や誹謗中傷などを含む投稿が集中する状況を表す」ものとして、人口に膾炙している。 「1億総発信時代」と呼ばれる現代では、日々、炎上騒動が勃発している。たとえば2024年8月には、タレントのフワちゃんが、Xで不適切な投稿をしたとして大炎上。芸能活動の休止に追い込まれた。パリ五輪期間中は、選手への誹謗中傷で溢れかえった。柔道の阿部詩選手は、敗退した際に号泣しただけで批判を浴びた。このほか、企業や政治家、そして一般人、被害を数えれば枚挙に暇がない。
