約四00年にわたって干菓子を専門に手掛ける菓子司 天明八年(一七八八)に起きた「天明の大火」、元治元年(一八六四)に禁門の変の兵火によって起きた「鉄砲焼け」などの大火災で、京の市街地は幾度か甚大な被害を受けている。そのため、約四〇〇年の歴史をもつ亀屋伊織ではあるが、古い記録は火災の際に焼失してしまい、創業年ははっきりとわからないという。しかし、「伊織」の名は、徳川三代将軍家光に「木の葉」という名の菓子を献上した折、御所百官名のひとつを賜ったものと伝えられている。 創業以来、情趣あふれる干菓子を専門に商ってきた同店では、今も、伝来の技術を継承した十七代目の主人が、一人で菓子をつくり続けている。必然的に、茶会などで使われる菓子の受注で手一杯となり、予約なしで店を訪れても買い求めることはできない。 老舗の菓子司らしく、菓子は総桐の「菓子だんす」に収納されている。一月には、紅白の有平糖を結んだ「千