東京大学本郷キャンパスには、九つの門がある。本郷通り沿いの正門や旧加賀藩主前田家上屋敷の御守殿門(ごしゅでんもん)だった赤門は有名だが、不忍(しのばず)池寄りの池之端門は学部棟から少し離れていることもあり、人の往来はあまり多くない。 「古書ほうろう」はそんな池之端門の目の前にある。目印は赤いテント屋根。入り口に均一価格の雑誌や書籍の箱を並べ、道行く人がつい足を止めたくなるような工夫がなされている。店内は古書に埋め尽くされ、その数は約1万冊。国内・海外文学、詩、音楽、写真、アート、伝統文化、建築などの多彩なジャンルが棚ごとにきちんと分類され、店主の目が隅々にまで行き届いた、丁寧な仕事ぶりがしっかり伝わってくる。 函入りの文学全集といった高価そうな本もあるが、手に取りやすい価格帯のものも多い。著者の名前は知らなくても「ちょっと面白そう」と興味をそそるタイトルも目立ち、次々と手に取ってしまいたく