国家の命運を賭けた太平洋戦争で、陸軍と海軍が対立していたのは有名な話だが、補給のための船を出し渋る海軍に業を煮やした陸軍が、独自に潜水艦建造に乗り出していたことはご存じだろうか。 海軍には頼らないという方針のもと、大急ぎで建造した潜航輸送艇・通称「まるゆ」は、沈むのにもひと苦労、時速15キロほどのノロノロ運転、中にはトイレすらなく…。 陸海軍対立の末の「失敗作」として語られることもある「まるゆ」。今回発掘された新史料から浮かびあがってきたのは、携わった人々の努力と、組織の歯車になる中で苦悩する姿だった。 (NHKスペシャル「新・ドキュメント太平洋戦争」取材班 長野怜英) 新たな史料を発見したのは、太平洋戦争中の日本軍の兵器を調査してきた研究家・国本康文さん。「第七陸軍技術研究所・参謀本部第十課」がまとめた「Germania造船所に於ける潜水艦建造に就きて」だ。ドイツ軍の潜水艦の設計図や、各