コロナ禍が完全に沈静化したわけではないが、ようやく演劇やライブ、コンサートやスポーツなどのイベントを無人とせず、観客を入れて再開できるようになった。従って、以前のような状態に戻っていくのかもしれないが、コロナ禍だからこそ、さまざまな模索がなされ、特殊な形式でイベントが開催されたことも興味深い。 例えば、最後の合唱によって、一斉に大量の飛沫が出るために、果たして年末に上演できるのかが疑問に思われていたベートーヴェンの交響曲「第九」。2020年の12月25日、筆者はみなとみらいホールにおいて、極めて異例なシフトの演奏を目撃した。 通常、ハイライトの「歓喜の歌」では、最前列に独唱の4人が並び、背後にオーケストラ、一番後ろはひな壇状に合唱隊が整列する。しかし、このときは小編成となったオーケストラの後ろにソリストを配置していた。しかも、半数に厳選された合唱隊は、ステージ上ではなく、パイプオルガン前の