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都市にらくがきできるアプリ・ゾンビから逃げる防災ゲームが入賞。福岡開催PLATEAUハッカソン

「PLATEAU Hack Challenge 2022 in Engineer Cafe (福岡)」レポート

特集
Project PLATEAU by MLIT

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 国土交通省が主導する、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」のハッカソンシリーズ2022年度の第2弾として、福岡Engineer Cafeを舞台にPLATEAU Hack Challengeが開催された。「3D都市モデルをどう活用するか」をテーマに、福岡に拠点をおくエンジニア、デザイナー、プランナー、マーケターらが集結し、新しいプロダクトの開発に挑んだ。

福岡市天神のハッカースペース「Engineer Cafe」を舞台にハッカソンを実施

会場となったEngineer Cafeは福岡市が掲げる「エンジニアフレンドリーシティ福岡」(https://efc.fukuoka.jp/)という大きな枠組みの中で官民一体のプロジェクトとして運営されている

 「PLATEAU Hack Challenge 2022」はエンジニアコミュニティとのコラボが1つの柱になっている。第1弾は「ヒーローズ・リーグ」、第2弾以降は各都市を訪れて地域のエンジニアコミュニティとのコラボで開催される。その最初の都市が福岡市だ。福岡市天神にあるハッカースペース「Engineer Cafe」を舞台に、2日間のハッカソンが行われた。

 初日にアイデアピッチとチームビルディングを経てハックがスタートし、翌日夕方には成果発表というタイトなスケジュール。今回、台風の直撃を受け2日目はリモートハッカソンとなった中、7チームが完走した。

 今回のハッカソン、開催地・福岡市の3D都市モデルを活用したいところだが、福岡市のPLATEAUのデータは整備中だ。そこで別途、特別に市が用意したShapefile形式の福岡市のデータも提供された。ただし、これ自体は3D都市モデルではないため、将来の福岡市での実装を待つサンプルとして、ハッカソンではPLATEAUのデータとの掛け合わせでの利用となった。

 そのほか、ノーコードでPLATEAUのデータを利用できるWebGIS系のツールとして、今回メンターとして参加したEukaryaの『Re:Earth』が紹介された。通常、PLATEAUのデータを扱うにはハードコーディングが必要となるが、『Re:Earth』はコーディングなしでもウェブアプリ上でデータが扱える。たとえば、属性情報にしてもクリックするだけで読み込むことができる。また、必要な機能をプラグインで拡張することができることも特徴の1つ。プラグインライブラリが整備されており、他のユーザーが開発したプラグインも利用可能だ。

ノーコードでデジタルアーカイブを作成できる『Re:Earth』

 PLATEAUの3D都市モデルについて補足すると、PLATEAUが採用しているCityGML形式は国際標準に準拠したデータ形式で、日本国内の都市における地形や建築物、橋梁、道路、土地利用といった地理空間情報が格納されている。また、建築物の名称や高さ、用途、建設年、階数などの属性情報が付与されていることもPLATEAUのデータの大きな特徴の1つ。こうした属性情報を掛け合わせることで、デジタル空間における精緻な現実世界のシミュレートの実現が期待されている(これがいわゆる「デジタルツイン」の世界)。

 ただし、CityGMLデータは扱いにも慣れが求められる。そのため、PLATEAUでは手軽に触ってもらうため、いくつかの都市データについては、3Dソフトに取り込んだり、地図リソースと組み合わせるなど、容易に活用できるようFBX、OBJ、3D Tilesなどの形式に変換したデータセットも公開している。

CityGMLを用いたデータ交換イメージ(東京都都市整備局ウェブサイトより) https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/machizukuri/pdf/digital03_3_5.pdf

 2日間、メンターとして田中聡至氏(Engineer Cafeアドバイザー)、黒川史子氏(アジア航測株式会社)、常名隆司氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社)、黒河優介氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社)、阿部琢哉氏(株式会社フロウプラトウ)、馬場英道氏、Balaha Nour氏(株式会社Eukarya)らがサポートに入った。

 1日目のメンタリングの段階で注目を集めたのは「ドローンを使ってゾンビから避難!」という作品だった。黒河氏は「土石流をゾンビという疑似的なものにするアイデアが面白い。小学生や子どもの層にどう受け入れられるかが気になります」とコメントしている。また馬場氏は「楽しみながら防災シミュレーションを行うというアイデアがいい。技術的な面でも、土石流の分布や体積、高さを計算するなど、PLATEAUならではの形状データだけでなく属性データと組み合わせた、さらなる発展が見込めるようなチャレンジをされているという点でも注目している」とコメントしている。

 果たして、3D都市モデルを整備・公開し広く知ってもらう段階から実社会における実装というフェーズへ、という期待で行われた地域版ハッカソン・福岡ではどんな作品が生まれたのだろうか。

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