すさんだ心救った言葉胸に 能登に通い続ける消防士

警察や消防の合同地震対応訓練に講師として参加し、チェーンソーの使い方を教える消防士の新妻拓弥さん=2日、福島県いわき市

 東日本大震災の津波で被害に遭った福島県いわき市の新妻拓弥さん(33)は被災直後に心がすさんでいた時、見知らぬ人にかけられた一言をきっかけに消防士になった。「苦労はきっと今だけ。必ず報われる」。途方に暮れた日々を救ってくれた、この言葉を胸に、能登半島地震の被災地にボランティアとして通い続けている。

 社会人2年目で団体職員だった2011年3月11日。いわき市沿岸部を津波が襲い、自宅の壁には流されてきた車が突っ込んだ。「家の中はぐちゃぐちゃ」。家族は無事だったが、地区の知人が犠牲になった。

 泥だらけの家財道具や日用品を家から運び出し、災害廃棄物置き場へ運ぶ毎日。周囲は潮をかぶった泥の臭いに包まれ、東京電力福島第1原発事故による放射性物質への恐怖から、見かける人は皆マスク姿。県外へ移住する人も相次いだ。「まるでゴーストタウン」。自分もここに居続けていいのかと思った。


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