東京のあちらこちらを散歩しようと思うと、たいていの人は区分地図か『散歩の達人』といったガイド誌を持っていく。 最近は東京散歩のために昭和初期や明治・大正の地図も復刻されているから、それらを持っていく人もいる(明治20年に参謀本部から刊行された地図など、江戸の名残がそこここに残っていて面白い)。池波正太郎や藤沢周平のファンなら江戸切絵図を片手に下町を歩いているにちがいない。 『アースダイバー』の中沢新一が独創的なのは、彼が戦前でも明治でも江戸でもなく、遙かに時代をさかのぼって縄文時代の東京地図を自前でつくり、それを持って歩いているところだ。そこから、とてもユニークな東京論が生まれた。 縄文時代は氷河期が終わって温暖化が進み、氷河が溶けて海面が上昇した時期に当たる。それまで大陸とつながっていた日本列島は大陸から切り離され、現在の東京付近は山の手の台地奥深くまで海が入り込んでいた。 この本につい